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日常って、微妙な差異こそ大事かなと思います。


by KATEK
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「フジオさん」の歌から

わたしは,矢野顕子が好き。

好きなCDの一枚に,『Home Girl Journey』がある。

そのなかの「ニットキャップマン」という歌。

川の近くの3畳くらいの空き地に住んでいるおじさん。
ニットキャップをかぶって,俳優の常田富士男さんにそっくりなので,
そのおじさんのことを少年は「フジオさん」と呼んでいる。
前に,川のテトラポットに足を突っ込んでしまった少年を助けてくれたのが
「フジオさん」。
にしめたようなTシャツを着ていた「フジオさん」と話すのが少年は好きだった。
でも,季節が巡って半年。
「フジオさん」は空き地のそばで死んでいた。
誰に会いたかったのか,お墓はどうするのか,いろいろ考える少年。
最後に「フジオさん」と2回呼んで,歌は終わる。

できすぎの話だけれど,わたしはこの歌が好き。
「フジオさん」と話している少年の姿や,ニコニコ笑い声を想像するのがすき。

昨日民放のテレビニュースのひとつに「ゴミ屋敷に住むおじさん」を
取材したものがあって,なんとなくそれを見ていた。

1年前,あまりの「汚さ」に,局の側でいっせいに掃除と片づけをして,
家の中も,庭もゴミがない状態にした。
その時おじさんは,「もう絶対ゴミをもちこんだりしません」というような
ことを,テレビの前で言っていた。
ところが,半年もたたないうちに元のようになってしまう。

一時期他の放送局でも,「ゴミ屋敷」をきれいにするというのが流行った
ような気がする。

でも,この「ゴミ屋敷」のおじさん。
近所迷惑だとは思うけれど,なぜか一方的にせめられないわたし。

使えるもの,きれいなものを集めてきてはそのままゴミ袋に入れて放置する。
だから,ぐちゃぐちゃで,自分でもどこになにがあるのかわからなくて
使おうと思ったもの・食べようと思ったものもゴミに化けていく。
売ろうと思ったものもいっしょ。

片付けられない症候群という「病気」はあって,それはそれでしかたない。
誰かの助けが必要だ。

でも,そればかりじゃなくて,わたしは「集める」気持ちがなんとなく
わかる気がする。
「もったいない」のもある。
でも,「モノ」にうもれることでしか消せない不安や寂しさもあるんだと思うのだ。
「モノ」で満たされるはずがない。
それがわかっているようで,わからない。わかることができない。

わたしもつい最近まで食欲とか所有欲とかでいっぱいだった。
なんだか,買わないといられないわたし。
買ったものが片付けられなくて,それを見るのもいやになるわたし。
自分が何をもっているのかわからなくなって
考えるのが嫌になって,ともかく何かを買ってしまうわたし。

買うのだって,拾うのだって感じ方は一緒じゃないかと思うんだ。
テレビに出ていたおじさんは,親を相次いでなくし,一人ぼっちになってしまった。
いい大人が,そのくらいの覚悟はあるだろうと,
世間はいうと思うし,わたしもそう思う。
自分で何とかしようとしない限り,人生は開けない。

それでも,今になってようやく気持ちが落ち着いてきたわたしは
過去の自分のことを思うと,他人事には思えない。
自分のことを本気で大事にするって,なかなか難しいものなんだもの。

最近,いろいろな事件が起こっている。
殺人事件,報道されない自殺や孤独死。
どれも,「異物」を排除するような目で語られてきているような気がして
ならない。
「汚いもの」には近づかないっていう変な潔癖症。
「汚いもの」は悪いものと思ってしまう単純思考。
こんなものが,多くなってきているような・・・

なんでも,とりあえず,わかってみようと思ってしまうわたしの単純さかしらん。
by KATEK | 2007-01-16 21:53