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日常って、微妙な差異こそ大事かなと思います。


by KATEK
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荒川さんの文章から

せっかくなので今はまっている荒川洋治さんの本から,一部抜粋しよう。

『本を読む前に』 新書館から

>文学部で源氏物語や川端康成や大江健三郎やフランス現代思想を
>お勉強しても,人間として使いものにならなければ,どうしようもない。
>真の「文学的想像力」とは,依頼状を書くことである。

  荒川さんのエッセイ集のなかで,一番おもしろいと思うのがこの
  『本を読む前に』だ。

  荒川さんは文章(詩やエッセイ)を書く人だから,原稿の依頼がよくくる。
  ところが,締切日だとか,写真が必要だとか,金銭的なこととか
  きちんと最初から説明しないでおいて,あとからバラバラと「~してくれ」と
  編集者側から依頼が来るのだそうだ。

  最初からいっておいてくれれば,自分なりの準備ができて都合をつけられる
  ことも多いのだけれど,そんな細かなことは想像もしないでただ「書いてくれ」
  とだけ頼むというのはどうか。

  相手のことと自分の仕事とを前もって考え,必要なことは始めにそろえて
  おける,そういう想像力こそ本物だということ。

  おお,そうか!
  と,わたしは納得。
  文学とは人間を描くことなのだから,(自然を描くとしても,人間の目で
  描くことには違いない),相手を想像するということはあたりまえのこと。
  でも,わたしもなかなかそうはできない。
  せっかちすぎるし,細かすぎるらしい,要求が。
  文学していないなぁとまさに思った次第。


『世に出ないことば』より

>個人のことばがいのちを保つには,それを見ている人が必要だ。ただ,
>ことばの意味を理解するということはない。ここに,誰もいわないこと,
>いえないことを述べた人がいる,その人を支えていこうという人たちが,
>いなくてはならない。そのことばがそのときの状況のなかで,どんなに
>個人的なものであっても,そう述べた人を孤立させまいとする人たちが
>いなくてはならない。いつも,どんな世界にあっても,そういう人たちが
>いることで,ことばは少しでも先へと,いのちを伸ばしていけるのだ。


   黒島伝治という作家の小説の中で,戦場での農民の会話をかいたところ
   があるそうだ。
   
   =「殺し合いって,無常なもんだなあ!」
     彼らは,ぐっと胸を突かれるような気がした。
     「おい,おれゃ,今やっとわかった。」と吉原がいった。「戦争をやっとる
     のはおれらだよ。」「おれらに無理にやらせる奴があるんだ。」
     だれかがいった。
     「でも戦争をやっとる人はおれらだ。おれらがやめれゃ,やまるんだ。」

   この文に対して荒川さんはこう続けた。

>素朴なことば,あるいは壊れもののことばとみなされて,これからも現実の
>社会のなかでは力をもたないものなのである。そう心に思ったとしても,
>そうはできない,そういうときのことばはすべて,個人のことばである。その人
>ひとりのものなのだ。そこにことばのはかなさも美しさも強さもあるのだが,
>個人のことばがひとつであること,残されていることは,はじめからことばが
>なかったことと同じではない。

     人間のことばって,個人のことばなんだ。それを支える人がいるんだ。
     ってことが,とってもわたしの中に響く。
     
     ことばが少しでも力をもちえるとしたら,わたしはその人のことばを
     支えていくことが大事なんだ。

ということで,荒川さんの視点というのは,とても新鮮に感じるものが多い。
あと1冊読む予定。

ところで,前に陶器市にいって,相方が選んで買ってくれたカップにひびが
はいっていて,残念ながら返金してもらったことがあった。
そこに今日は突然のプレゼント。
コーヒーを飲むための「マイカップ」を買ってきてくれた。
うれしー。
(写真ではおおきくみえるけれど,手のひらサイズ。デミタスカップ。
ちゃんとまんなかには指のくぼみがついていて,シンプルだけれど
使い心地がいいのです。)
荒川さんの文章から_e0046083_21311477.jpg


ついでに,相方が作ってくれたプリンをご紹介。
これは最初のもの。あとでもう一度作ってくれて,今まだ残りがある。
うれしー。
荒川さんの文章から_e0046083_2133086.jpg

焼きプリンなのです。すもはいっています。
荒川さんの文章から_e0046083_21331865.jpg

by KATEK | 2007-02-22 21:33