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日常って、微妙な差異こそ大事かなと思います。


by KATEK
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『あつし』をみました。

野村万斎が演出・出演した,『あつし』という舞台をテレビでみました。
去年,世田谷区で行われた講演のVTRです。

中島敦の「山月記」と「名人伝」の文章をそのままつかって,舞台は構成されていました。
「山月記」のほうでは,野村万作がトラに変身していく主人公を演じています。
群読をとりいれたものということでは,『子午線の祭り』に似ているといえるでしょう。

野村万作の語りとからだの動きは,能や狂言の方法を生かしたもので
テレビで見ているだけなのに,感動的でした。
緩急が入り混じって,鋭い直線的な動きがきまります。
腰から動いている様子がよくわかりました。
伝統的な型の生かし方はなかなかです。

優秀な官僚として暮らしていた日々を捨て,突然山に入ってしまう主人公。
だんだん人間的な部分が,トラに入れ替わっていく絶望や諦念が,万作のからだと
声で,うまく表現されていました。

また,原作を読んで見たいと思います。

番組のはじめに,万作へのインタヴューがありました。
ここで語られていたことの中で,わたしがとくになるほどと思った部分があります。
演じる際に大事にしていく(念頭に置く)順番です。
まずは,美しさが必要。次におもしろさ。最後に笑い,というのです。

狂言は「笑い」が大事です。
笑いの中に,人間へのいとしさや共感がたくさんもりこまれています。
けれど,だからといって,笑いをまずとろうとしてはだめだというのです。
それはサービス過剰だと。
まず,伝統的な型や謡の美しさが表現されることで,そこからはじめて笑いに
たどりつけるということ。

今の社会にもあてはまることではないでしょうか。
せつな的な笑いはむなしい。
単にジャーナリスティックな事件のとりあげかたは,浅い。
まず,歴史が土台になっているということが大事なのではないかと。

憲法「改正」問題も,もっと基本の勉強をしていきたいと,(ちょっと飛んだ話には
なりますが)再確認した次第です。
授業も同じ。
たとえば,今戦後の政治や経済について学ぶ機会が,極端に減っています。
また,意見を聞くことにとらわれすぎて,価値が相対的に語られすぎる傾向も
あるように思います。

受け継ぐことの大切さをまた考えるきっかけになったようです。
by KATEK | 2006-05-08 20:45