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日常って、微妙な差異こそ大事かなと思います。


by KATEK
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歌も消耗品?

普段まずは見ないミュージックステーションという番組を見た。
SMAPのトライアングルを見たくて。
ここで歌われていた数々の歌は,ぜんぜん魅力を感じさせない
消耗品のようだ。
ことばが大切にされていない。
歌を深める作業がされていない。
こんなことをいっているのはちょっと古びたおばさんだからかも。

なんだか宮沢和史の『島唄』が無性に聞きたくなった。
彼のこの歌は,彼自身の中で消化され,大事にされてきたから。

そしてなんだか詩も読みたくなってきた。

久しぶりに詩の紹介。

伊藤信吉詩集より  日本の秋風―帝国考

 晩秋の東京・池袋東口の辺りに
 午後の日は薄くこぼれ
 人影はすくなかった。

 そこの駅手荷物取扱所にいた青年二人が
 警察の不審訊問を受け
 交番へ連れこまれた。

 一人は詩人たらんとする伊藤信吉。
 一人は画家たらんとする友人福田貂太郎。 
 天皇即位式の前日― 一九二八年十一月九日のことであった。

 上京したばかりの
 田舎者の風態。
 長髪。
 それが
 何で
 不審尋問にひっかかる?
 何で連行するとおどかされる?

 即位式にかこつけての特別警戒に
 どれだけの長髪が
 田舎者が
 風態貧しいものが
 不審尋問におびやかされたか。

 ささやかな私のこの記憶を
 昔話というな。
 笑い話というな。

 一九二八年という年は
 春三月には日本共産党を中心とする一六〇〇名検挙の
  「三・一五」の年であり
 梅雨六月に治安維持法極刑改悪の年であり
 秋十一月に即位の年であった。

 そうして一九七六年の
 この秋。
 <天皇在位五〇年祝典>ときた。

 ウソをつけ。
 今年は四九年目だ。
 その一年は何だ。何のたぶらかしの一年だ。

 四九年経てば忘れる記憶がある。
 四九年経って忘れられぬ記憶がある。
 五〇年詐称のその年月は
 治安維持法的帝国を否とする人たちの検挙,投獄。
 戦争の二〇年ではじまった暗黒累々の半世紀だ。

 この秋を吹く
 乱気流の風。
 私の記憶のシミに吹く
 日本の秋風は未だに<帝国>の気配を孕んでいる。
by KATEK | 2005-12-23 21:55